主要著作の紹介

研究所主幹・岡野守也の主要著作を紹介しています。
 
『トランスパーソナル心理学』一九九〇年(増補版二〇〇〇年)、青土社
 行動主義・実験主義的心理学、精神分析、人間性心理学に続いて、一九六〇年代末に、アメリカで興った「心理学の第四の潮流」と呼ばれるトランスパーソナル心理学の概説紹介。東洋宗教と西洋心理学を統合し、近代的な自我の確立を超えた人間性の成長可能性を明らかにしたその流れの登場の時代的な背景、中心的な理論家、マズロー、フランクル、アサジョーリ、ウィルバーの学説を要約紹介し、現代日本の状況に対する意味を述べる。

『唯識の心理学』一九九〇年、青土社
 二、三ないし三、四世紀に興起した、空・中観の思想に並ぶインド大乗仏教のもう一つの頂点と呼ばれる唯識を、現代の深層心理学・トランスパーソナル心理学的な視点から現代的に読み解く試み。心を八つの領域に分析する「八識説」を仏教の深層心理学、人間の世界認識の三様式を分析した「三性説」を認識論、怒り、恨み、嫉み、害意、傲慢などの「煩悩論」を心理現象論、さらに修行の深まりの段階「五位説」を成長段階論などとして現代人にも普遍・妥当性を持つものとして読む。

『美しき菩薩・イエス』一九九一年、青土社(品切れ中)
 近代の歴史学・文献学的な聖書研究によって、いわば玉ネギの皮むきの如く解体された「イエス像」を、そうした研究の成果を踏まえた上で、もう一度、現代人にとって意味ある「人間の生き方の典型的・極限的なイメージ」として、とりわけそのイメージの「美しさ」がどこから生まれるかを読み取る。キリスト教徒にとっては救い主、宗教史的にはキリスト教の開祖と捉えられるイエスを、仏教の「菩薩」の概念を援用して描き直す試み。

『能と唯識』一九九四年、青土社(絶版)
 観阿弥・世阿弥父子の座が唯識を建前とする法相宗・興福寺に属していたことを手がかりに、能とりわけ夢幻能の成立の背後に唯識教学の強い影響があることを推測し、またテキスト上の証拠も取り出し、その上で、唯識の理論を援用して能の主要なテキストに新たな解釈と鑑賞を加えた。
 
『わかる唯識』一九九五年、水書坊
専門仏教用語を最小限にとどめ、難解とされる唯識のエッセンスを、人間の根源的な悩み・煩悩とその解決・悟りの仕組みを明らかにしたものとして、一般読書人や学生にもわかるよう平明に解説した。「歴史上もっともわかりやすい唯識」と評価されている。

『唯識で自分を変える』一九九五年、すずき出版
単なる難解で抽象的な教義の体系と見られがちな唯識を、人間性/トランスパーソナル心理学などのセルフ・ヘルプの心理学のスタイルを借りて、レクチャーとワーク(実習)を組み合わせた、人間の日々の生き方そのものに関わる、実際に使えるものに適用した。
 
『よくわかる般若心経』PHP研究所、二〇〇四年(『わかる般若心経』一九九七年、水書坊をごく一部改訂して文庫化)。
 日本人がもっとも知っているようで、実はその内容を理解していない『般若心経』の「空」の思想を、現代日本人が自らの精神的な伝統の根源にある大きな思想的遺産として再発見・再獲得できるように、できるだけ正確に、しかし平易に解説した。「空」は最終的には体験的・直観的に体得するほかないものだとされるが、ここでは縁起、無自性、無常、無我、一如、苦などの概念との関わりで、言語化可能なぎりぎりの線まで語ることを試みた。

『唯識のすすめ――仏教の深層心理学入門』一九九八年、NHK出版
 NHKのラジオ放送のテキストを元にした唯識の概説書。筆者が現代の三つの大きな課題と捉えている、戦争、環境破壊、意味の喪失について、その克服の決定的なヒントとして唯識を解読した。唯識の体系を〇-空、一-一如、二-二無我、三-三性、四-四智・八識、五-五位、六-六波羅蜜、∞―無住処涅槃というふうに、概念に関わる数の順に述べ、理解と記憶を容易にすることを試みている。また、西欧の深層心理学の三大潮流、フロイド、ユング、アドラー、及び人間性心理学、トランスパーソナル心理学との統合的理解の可能性について要点を述べた。

『大乗仏教の深層心理学――『摂大乗論』を読む』新装重版二〇一一年(初版一九九九年)、青土社
 唯識の立場から大乗仏教の全体像をきわめてシステマティックに理論化した唯識の代表的な古典『摂大乗論』を現代語訳(下記)を使って概説する。とりわけ、人間の心のもっとも深い領域としている「アーラヤ識」が、迷いの根拠であると同時に悟りの根拠としていることの意味、すなわち心の深層領域が人間の悩み・葛藤・問題の根源であるとともに、それを超える可能性を含んでいると主張しているところに、人間の希望の根拠を読み取っている。

『コスモロジーの創造――禅・唯識・トランスパーソナル』二〇〇〇年、法蔵館
 宗教哲学、禅、唯識、トランスパーソナル心理学などに関わる論文の集成。中心的テーマは、人間が何らかの世界観・コスモロジーを持たないでは生きられないこと、近代の物質主義的な科学主義と個人主義的な民主主義が必然的に意味の次元を見失わせ、倫理の崩壊をもたらすことを指摘し、宇宙全体の関連・つながりと重層性・かさなりの構造を捉えた新しいコスモロジーによる、人間の生死の意味の再発見と倫理の再確立を提案している。

『自我と無我――〈個と集団〉の成熟した関係』二〇〇〇年、PHP研究所(絶版)
 人間にとって重要なのは、自我の確立か無我になることかという議論・対立は、ほとんど個人主義か集団主義かという問題と同一視された、日本の近・現代の大きなテーマであるが、実はそうした対立は「無我=滅私」という概念の理解に誤解・混乱があったためであることを指摘し、唯識における無我の理解と、ピアジェなどの発達心理的な視点、およびケン・ウィルバーの提唱する「コスモスの四つの象限」の概念を導入することによって、混乱を整理して、対立を解消・止揚し、個と集団のバランスのとれた関係を可能にする成熟したパーソナリティ像を提案する。

『生きる自信の心理学――コスモス・セラピー入門』二〇〇二年、PHP研究所
 現代の科学的な宇宙像、トランスパーソナル心理学、論理療法、アドラー心理学などの成果を統合しながら、深刻な自信喪失やニヒリズムに陥っている現代人が、どうしたら根本的な自信を持つことができるか、理論とワークの両面からアプローチする。すでに多くの社会人・学生を対象として行なわれ、目覚しい効果のあがることが現場で実証された方法をわかりやすく体系的に紹介する。

『聖徳太子『十七条憲法』を読む――日本の理想』二〇〇三年、大法輪閣
 日本初の憲法である『十七条憲法』のなかに込められた「和」という理想は、人間同士の平和と人間と自然の調和を意味するものであって、単なる保守的なイデオロギーなどではなく、現代日本にとっていかに原点的に重要かつ有効であるかを読み取り、〈聖徳太子〉のイメージと『十七条憲法』のなかみが、日本人の健全なアイデンティティの再確立のベースとなることを願って書かれた。

『道元のコスモロジー――『正法眼蔵』の核心』二〇〇四年、大法輪閣
 鎌倉仏教の代表的存在の一人、曹洞宗の祖師、深い思索を展開した中世の思想家として知られる道元の主著『正法眼蔵』は、非常に魅力的ではあるが難解な文体で書かれていて、なかなか本当には理解されていない。その核心にあるものを、全肯定・絶対肯定のコスモロジーとして読み解いた。

『唯識と論理療法――仏教と心理療法・その統合と実践』二〇〇四年、佼成出版社
 仏教と心理学はどちらも「心」をテーマにしている。その両者をどう生産的に統合するか。「ものの見方を変えることで感情や生き方を変えることができる」という共通点のある唯識と論理療法を選択し、日常生活に役立つようなかたちで統合することを試みた。前例のない新しいシステムであるが、その有効性はすでに多くの授業やワークショップで実証されている。

『空海の『十住心論』を読む』二〇〇五年、大法輪閣
 空海が天才であることはよく知られているが、その主著『十住心論』で実際に何が語られているかはほとんど知られていない。ひたすら食欲や性欲に駆られている凡夫の段階から真言密教の究極の覚りまで、人間の心を十段階に分けて論じた、その論旨は、実は日本精神史にとって決定的に重要な意味を持っている。空海の生涯とこの主著の、時代的、現代的意味を明らかにした。

『いやな気分の整理学――論理療法のすすめ』2008年、NHK出版生活人新書
 自我の確立・再確立の段階の問題に関して顕著な効き目があるアメリカの心理学者アルバート・エリスの創始した「論理療法」を、専門的な学問としてではなく、筆者自身やまわりのたくさんの方の、困った性格……というより「心の癖」を治すことができた体験を元に、できるだけ平易に一般の読者の日常に活かせるかたちで語った。 

『仏教とアドラー心理学――自我から覚りへ』2010年、佼成出版社
 自我以前―自我確立―自己実現―自己超越という心の発達段階を想定すれば、アドラー心理学は主に自我の確立・再確立の、さらに若干自己実現の段階に焦点を当てた理論と技法であり、仏教は自己超越の段階に焦点を当てた理論と技法である、と位置づけられる。現代社会の深刻な心と行動に関わる問題について、両者を統合したアプローチによって、適切で有効な理解と対処が可能になると考えられる。特に、焦点の当たっている段階は異なっているが、「共同体感覚」と「縁起の理法」という両者のコンセプトには本質的な結合点がある。本書が、仏教と心理学・心理療法を統合し活かして使うためのヒントになることを願っている。

『コスモロジーの心理学――コスモス・セラピーの理論と実践』2011年、青土社
 今、たくさんの現代人が感じている「生きづらさ」のいちばん底には空しさ・ニヒリズムの問題が潜んでおり、それがいちおうふつうに生活している人にも、「半健康」と呼ばれるような、さまざまな心や体や行動の不調を生み出している。「コスモス・セラピー」は、そうした生きづらさ――ニヒリズムやそれがもたらす不調や症状をいちばん深い根から取り除くことを目的とした心理療法的思想・思想的心理療法であり、これまで社会人教育や大学の授業での実践で大きな効果があることを確認してきた。読者もぜひ本文を読んで実践し、効果を感じていただきたい。

『「日本再生」の指針――聖徳太子『十七条憲法』と「緑の福祉国家」』2011年、太陽出版
 日本の原点・出発点は、どうすれば人間と人間の平和と自然と人間の調和に満ちた永続しうる国になれるか、国家建設の理念と基本的方法を示した聖徳太子『十七条憲法』にある。一方、現代の産業・経済・政治・社会システムにおいて、具体的に「持続可能な国づくり」を計画的に着々と進め世界の先頭を切っているのがスウェーデンである。ならば、「和の国・日本」という原点から「エコロジカルに持続可能な国家・緑の福祉国家」という到達点の延長線上に、これからの日本を持続可能な国にしていく方向があるだろう。本書では、そのことを統合的に述べた。

『ストイックという思想――マルクス・アウレーリウス『自省録』を読む』2013年、青土社
ローマ五賢帝のひとりマルクス・アウレーリウスが哲学的・人生論的所信を書き記した『自省録』は、ストア派哲学の古典的名著である。「私が宇宙の中に生まれて来た理由は、宇宙から与えられた使命・公務を果たすことにあり、死はその宇宙への帰郷である」というストア派のコスモロジーは、過酷な現代の状況の中で生きるための心の拠り所になりうる。ストア派哲学を自ら生きた彼の、まさにストイックな言葉と生き方の爽やかな感動を読者に伝えたい。

『『金剛般若経』全講義』2016年、大法輪閣
「『金剛般若経』は、いわば「空」という言葉を使わないで空を説いた大乗仏教の経典である。空(くう)」という言葉を知らない日本人はいないだろう。だが、その意味が分かっている人は、どのくらいいるのだろうか。日本人の精神的なアイデンティティの基礎であった神仏儒習合の中核である大乗仏教の、さらに中核にある空・智慧と慈悲という思想がわかることは、日本人としてのアイデンティティの再発見・再確立の確かな基礎になるだろう。本書は、現在唯一の一般に入手可能な『金剛般若経』の全文講義である。


◎旧ホームページ(2011年まで)の著作紹介ページ
 次のリンクの各ページをご参照ください。表紙画像、販売サイトへのリンクのほか、一部に初版当時の紹介書評を掲載しています。

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